【ハイデラバード=共同】ことし4月に大地震が起きたネパールで、ヤダブ大統領が20日、新憲法を公布した。同国を7州の連邦による世俗国家とすることが柱。ネパールは2006年に内戦が終結、08年から約7年かけて制憲議会で新憲法の制定作業が行われていたが、政党間対立で難航していた。同国の「憲法不在」がようやく解消された。
ヤダブ大統領は公布に際し「わが国は、多民族、多言語、多宗教の国だ」と述べ、憲法でネパールの多様性が保障されたと強調した。
新憲法では、国民の8割を占めるヒンズー教を国教とせず世俗国家とし、大統領は国家元首で象徴的な存在とした。政治的実権は首相が握る。憲法制定に伴い、新たな委員会が7州の名前や境界などを議論する。さらに、長年不在だった地方自治体のトップが決まり地方自治の仕組みが整えば、約9千人の死者を出した大地震からの復興の受け皿となる。
ただ、新憲法をめぐっては一部の少数民族が反発し、8月以降、治安部隊との衝突で約40人が死亡した。「マデシ」と呼ばれる南部のインド系住民が、新憲法は州の区分けで地域が分断される可能性があるなどと主張している。南部ビルガンジでは20日、デモ隊と警官隊の衝突で1人が死亡した。首都カトマンズでも厳戒態勢が敷かれた。
主要政党の合意に基づき、コイララ首相は近く退陣、新首相が選出される見込み。新首相には統一共産党(UML)のオリ元副首相の就任が有力視されている。
ネパールは約10年に及ぶ内戦の終結を経て、08年に立憲君主制を廃止し、連邦共和制への移行を決議。当初は10年までに新憲法を公布するとしていたが、政党間の対立が原因で制憲議会での議論が難航し、期限は何度も延長された。だが、4月の大地震を受け、政党対立を終わらせ復興に集中すべきだとの機運が高まり、制定作業が加速した。