朝日新聞社と日本高校野球連盟は19日、第100回全国高校野球選手権記念地方大会を開催している各都道府県高野連に対し、熱中症対策に万全を期すよう呼びかけた。選手だけでなく、観客、学校応援団に対しても十分に配慮するよう求めている。
「熱中症への注意を」と題した文書で、地方大会と全国選手権大会の取り組みを参考例として提示。2013年に40・7度を記録した甲府市がある山梨大会では、暑さ指数(WBGT=湿球黒球温度)と観測気温に応じ、打者及び走者にベンチに戻っての水分補給を認めていることや、通常の五回終了時に加え、七回終了時にも5分間、水分補給、休養の時間を設けていることなどを紹介。甲子園球場である全国大会では理学療法士が観客席前列に座り選手の様子をチェック、異常があればベンチ裏で対応することなどを伝えている。
「熱中症への注意を」全文
第100回全国高校野球選手権記念各地方大会の運営、ありがとうございます。今夏、日本各地は猛烈な暑さに見舞われています。各地方大会でも、応援団や観客の方など多数の人が熱中症で搬送されています。そこで、各地方大会の運営にあたるみなさんに、熱中症の対策に万全を期していただくようお願いする次第です。
参考までに夏の甲子園での大会や、すでに地方大会で行われている取り組みをお伝えします。これらをもとにするなどして、みなさまの地方大会に合わせた効果的な対策をお取りいただきますよう重ねてお願いします。
①全国選手権大会での取り組み
・1日あたり14~18人の理学療法士が対応にあたっています。背番号入りのカップにスポーツドリンクと氷囊(ひょうのう)を用意。体温計や血圧計の備えもしています。
・理学療法士は大会前に選手にアンケートをとり、選手の既往症などを把握します。試合中は療法士が観客席前列に座り、グラウンドの選手の様子をチェックしています。異常があればベンチ裏で対応にあたります。試合後は疲労回復を促すクーリングダウンを指導しています。
・観客に対しては球場のスクリーンに「こまめに水分補給をしましょう」などの注意を表示し、繰り返しアナウンスをしています。
・今年の第100回大会の開会式では選手を始め、吹奏楽、合唱、プラカードを持つ生徒らにもペットボトルを配布し、式中の飲料を勧めることを検討しています。
②山梨大会での取り組み
2013年8月に40.7℃を記録した甲府市がある山梨県高野連の主な取り組みを紹介します。全国選手権山梨大会では観測気温とともに、環境省熱中症予防情報サイトよりWBGT(湿球黒球温度)を得て試合開始時の指針とし、以下の対策を取っています。
A.どの試合でも5回終了後のグラウンド整備で散水
B.WBGT28℃、観測気温35℃の場合は
・打者及び走者はベンチまで戻っての水分補給可
・選手が十分な水分補給ができるまではグラウンドに出ることを促さない
C.WBGT31℃、観測気温38℃の場合は
・5回終了後のグラウンド整備に加え、7回終了時に5分間試合を中断し水分補給の時間を設ける
・審判員もこの間は審判控室に入り休養や水分補給をする
D.WBGT34℃、観測気温40℃の時には大会会長、副会長、委員長らを中心に別途検討
E.観客への呼びかけは都度、行う。水分補給と帽子を持っている場合の着帽とともに、具合が悪くなった場合は速やかに大会本部へ連絡をするようにアナウンス
学校応援団の熱中症とみられる症状も、多く発症しています。学校応援団に対しても十分な配慮をしていただくようにお願いいたします。
以上
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《暑さ指数(WBGT)》 人体と外気との熱のやりとりに着目し、気温や湿度、日射などから算出する指標で、環境省の熱中症予防情報サイトで公表されている。