国連教育科学文化機関(ユネスコ)は日本時間の10日未明、第2次大戦後のシベリア抑留の資料と国宝「東寺百合文書」(いずれも京都府所在)の重要性を認め、世界記憶遺産に登録したと発表した。アラブ首長国連邦のアブダビで4~6日に開かれた国際諮問委員会の勧告を踏まえ、ユネスコ事務局長が決定した。
京都府舞鶴市と政府が2014年3月にそれぞれ登録を申請していた。日本の記憶遺産は、登録済みの「山本作兵衛炭坑記録画・記録文書」(福岡県)と「慶長遣欧使節関係資料」(宮城県ほか)、藤原道長の自筆日記「御堂関白記」(京都府)と合わせ5件になった。
シベリア抑留資料は、日本人捕虜の日記やはがきなど舞鶴引揚記念館(京都府舞鶴市)所蔵の570点で、正式な表題は「舞鶴への生還 1945~1956シベリア抑留等日本人の本国への引き揚げの記録」。舞鶴市は申請に当たり、姉妹都市、ナホトカ市の協力を得てロシア側でも資料を調査した。
東寺百合文書(京都府立総合資料館提供)=共同
東寺百合文書は、東寺(京都市)に伝えられた奈良から江戸時代の約2万5千通に及ぶ古文書。当時の寺院制度や社会構造を知る貴重な史料で、1997年に国宝に指定された。
記憶遺産の登録は2年に1度行われる。17年の登録に向けては、日本最古の石碑を含む「上野三碑」(群馬県)と、大戦中にナチス・ドイツの迫害から多くのユダヤ人を救った「命のビザ(査証)」で知られる外交官・故杉原千畝氏の資料(岐阜県)の申請が決まっている。江戸時代の外交使節「朝鮮通信使」の記録も、日韓の関係自治体などが17年登録を目指している。〔共同〕