【ワシントン=共同】生物の遺伝情報を改変する「ゲノム編集」という最新の技術を使い、ブタの遺伝子62個を操作して働かなくさせたと米ハーバード大医学部などのチームが米科学誌サイエンスの電子版に発表した。一度に改変した遺伝子はこれまで6個が最高だったとみられ、その10倍以上に上る。
ゲノム編集技術の実用化に向けて前進したといえそうだ。チームはブタの臓器を人間に移植する「異種移植」につながるとしている。
ブタは臓器の大きさが人間に近い。だがブタの染色体の中には、過去長期間にわたってブタに感染してきた「レトロウイルス」の遺伝子が組み込まれており、人間にブタの臓器を移植した場合、この遺伝子がウイルスを作り、人間に感染、病気を引き起こす恐れが指摘されている。
チームはブタの腎臓の細胞を使って遺伝子を分析。62の遺伝子は人間にウイルスを感染させる恐れがあると割り出した。
最新のゲノム編集技術により、これらの遺伝子を破壊した。ブタの腎臓の細胞と人間の腎臓の細胞それぞれ約千個を一緒に培養すると、遺伝子を破壊していないブタの細胞だと1週間でほぼ全ての人間の細胞にウイルスが感染したが、破壊した細胞だとほとんど感染しなかった。