皇后さまは20日、81歳の誕生日を迎えられた。これに先立ち、宮内記者会の質問に文書で回答された。戦後70年の節目で、各地で災害も相次いだ今年は「この世に悲しみを負って生きている人がどれ程多く、その人たちにとり、死者は別れた後も長く共に生きる人々であることを、改めて深く考えさせられた一年でした」とつづられた。
皇居・御所の庭を散策する天皇、皇后両陛下(9月29日)=宮内庁提供
国民学校5年生の時に終戦を迎えられた皇后さま。天皇陛下と共に国内外の各地で戦没者を慰霊したこの1年を「改めて過去を学び、当時の日本や世界への理解を深める大切な機会」と考えて過ごしてきたとし、陛下の念願だった太平洋戦争の激戦地、パラオへの訪問は「忘れられない思い出」と表現された。
孫で皇太子ご夫妻の長女、愛子さま(13)が宿題で戦争に関する新聞記事を集めた際のエピソードも紹介された。原爆投下直後の広島で女子学生たちが電車を復旧させたという記事について2人で話したといい、「愛子が、悲しみの現場に、小さくとも人々の心を希望に向ける何らかの動きがあったという記事に心を留めたことを、嬉しく思いました」と記された。
この1年に起きた火山噴火や大雨による洪水などを挙げ、「日本各地を襲う災害の報に接することが多く、悲しいことでした」と振り返る一方、日本人2人のノーベル賞受賞決定やラグビーのワールドカップ(W杯)での日本代表の活躍などを喜ばれた。
皇后さまは8月、心臓を動かす筋肉への血流が悪くなる心筋虚血の疑いがあると診断された。体調に関しては「今のところ、これまでと変わりなく過ごしています」と説明された。宮内庁によると、両陛下は健康維持のため毎朝、皇居内を約1キロ散策し、侍医が付き添いながら一部区間を小走りされている。