日銀は30日開いた金融政策決定会合で追加金融緩和を見送り、年80兆円の資金を供給する現状の緩和策の維持を決めた。原油価格の影響を除いた物価の基調は上昇しているとして、現行の緩和策で目標である物価の2%上昇を目指す。新興国経済など先行きの不透明要因も多く、次回会合以降も引き続き物価の基調を慎重に点検する。
現状維持は8対1の賛成多数で決めた。木内登英審議委員は資金供給のペースを減らすべきだと提案。追加緩和の提案は出なかった。
この日発表した9月の消費者物価は生鮮食品を除き、2カ月続けて前年同月比で下落した。ただ日銀は生鮮食品とエネルギーを除いた消費者物価の上昇率が8月に1%を超えるなど値上げの品目数も増えており、「物価の基調は着実に改善している」(黒田東彦総裁)とみていた。
夏場以降、新興国経済の減速や金融市場の乱高下が起きたが、今のところ国内景気への影響は限定的だと判断したとみられる。好調な企業業績を背景に設備投資計画は高水準を維持。19日の支店長会議では雇用や賃金の改善が報告され、日銀内では「消費は底堅い」との見方が出ていた。
ただ新興国経済の先行きは不透明なうえ、原油安で人々の物価上昇期待が鈍りかねない。日銀もこうしたリスクを認識している。今のところ物価の基調は崩れていないと判断したが、次回以降の会合でもリスク要因を慎重に点検する。
同日午後には「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」を公表し、2017年度までの物価上昇率と実質経済成長率の見通しを示す。
日銀の追加緩和見送りを受け、東京外国為替市場の円相場は発表直後に一時、1ドル=120円29銭まで上昇した。発表前は120円90銭前後で推移していた。