自宅の買い替えを理由に生活保護の支給を止めたのは違法だとして、埼玉県春日部市の60代の女性が、市の支給停止決定の取り消しを求めた訴訟の判決で、さいたま地裁は30日までに、「原告の特殊事情に十分な配慮を欠いている」として決定を取り消した。28日付。
これに先立ち地裁は昨年7月、女性が求めた決定取り消しの仮処分申し立てを「市の対応は裁量権の乱用の余地がある」として認め、女性は生活保護を受給している。
判決によると、女性はさいたま市の一戸建てに2010年から住み、生活保護を受けていた。女性も同居の長男も病気のため就労困難で、11年には交通事故に遭って足が不自由になった。そのため13年に自宅を売却し、通院先が近い春日部市にマンションを買った。
春日部市は14年1月から生活保護の支給を開始し、女性に対しては、マンションを売却して生活費に充てるよう指導。女性が応じなかったため、同年6月に生活保護の支給を停止した。
判決は、女性の世帯について「住宅買い替えの前後を通じて保護を要する状態にあった」と指摘した。春日部市は「判決文の内容を精査し、対応を検討する」としている。〔共同〕