政府の経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)は4日、国内総生産(GDP)を600兆円まで増やす目標の具体化に着手した。首相は設備投資や賃上げを促進する緊急対策を月内に策定するよう指示。民間議員は具体策として企業の利益にかかる法人実効税率を来年度中に20%台に引き下げるよう提言した。
政府は今月下旬に子育てや介護の支援政策を柱とした「1億総活躍プラン」の緊急対策をまとめる計画だ。企業に設備投資や賃上げを促す法人減税などの施策を同対策に盛り込み、15年度補正予算案や来年度税制改正大綱に反映する。
政府は法人実効税率を今の32.11%から17年度に20%台に引き下げる方向で調整している。民間議員は引き下げ時期の1年前倒しを求めた。財源については「多年度の税収中立で引き下げるべきだ」と述べ、16年度は減税先行を主張した。甘利明経済財政・再生相は記者会見で「政府としては可能な限り早くしようということだ」と語った。
来春にまとめる600兆円目標を巡っては、民間議員が原案を提示した。環太平洋経済連携協定(TPP)でインフラ受注を含む輸出を年25兆円増やし、五輪に伴う訪日客消費を14年の2兆円から7兆~10兆円に拡大させる。
ただ、賃上げによる消費増効果など、安倍政権の実績を大幅に上回る項目が目立った。政府の経済成長率の目標(名目3%)並みに賃金が上がれば60兆円の消費が増えるとしたが、12年10~12月期から15年4~6月期の個人消費は5兆円増にとどまる。設備投資の目標も10兆円超と大きいが、企業側には慎重な姿勢が目立つ。
首相は来月に策定する財政健全化の工程表に関し、「政策の有効性の科学的検証に基づく仕組みを構築するように」と馳浩文部科学相に指示した。民間議員は現在は都道府県ごとの平均点しか公表されていない全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の公表項目の拡充を求めた。