医療サービスの公定価格にあたる診療報酬の2016年度改定に向けて、議論が本格化してきた。厚生労働省は4日、薬局や診療所の利益率が高いとする調査をまとめた。こうした結果を踏まえて、社会保障費の伸びを抑える目標に向けて医療費にメスを入れる。医師らの技術料にあたる「本体」部分へのマイナス圧力も高まっている。
厚労省は4日、医療機関などの経営状況を示す医療経済実態調査をまとめた。14年度の保険薬局の経常利益率は7.0%だった。グループの店舗数別に調べると1店だけの薬局は損益ゼロ。一方で20店以上は11.9%と、規模が大きいほど利益率が高い。仕入れなどのコストを抑えられるためだ。診療所の利益率は9.1%と病院の2.0%を大幅に上回った。
厚労省はすでに全国の大病院の前に展開する大手チェーン薬局の報酬を削る方針を示しており、今回の調査結果はこれを後押ししそうだ。
財務省も10月末、診療報酬の引き下げを求めた。薬の公定価格の薬価に加え、本体も「一定程度のマイナス改定が必要」と踏み込んだ。本体が下がれば10年ぶりだ。
財務省が本体の引き下げにこだわる背景には、政府が6月にまとめた経済財政運営の基本方針(骨太の方針)がある。社会保障費の伸びを3年で1兆5000億円以内に収めることを目指す。達成するには16年度で診療報酬改定を中心にして1700億円を削る必要がある。
1700億円を削減するには、診療報酬全体で1.5%程度のマイナス改定が必要だ。ここ最近、薬価のマイナス分は1.3%分ほど。もし今回も同じならば、残る0.2%分のマイナスは、本体の引き下げで対応することになる。
ただ与党の厚労族議員の間では「本体のマイナスは認められない」(幹部)との声が多い。12月末の決着に向けて議論は曲折がありそうだ。