【バレッタ=森本学】欧州連合(EU)統計局が13日発表した2015年7~9月期のユーロ圏の域内総生産(GDP)は物価の影響を除いた実質で前期比0.3%増えた。年率換算では1.2%増。ドイツの消費拡大などがけん引した。中国経済減速の影響などから景気の先行指標には不安の芽も見えつつあり、回復の勢いを持続できるかはやや見通しづらい。
7~9月期の成長率は前期(0.4%)から小幅ながら鈍化したものの、10四半期連続のプラス成長だ。ユーロ圏の緩やかな成長を支えているのが域内の個人消費の底堅さだ。過去最低水準の失業率が続くドイツなど圏内の雇用情勢の底堅さが堅調な個人消費を後押ししている。ユーロ圏全体でみても、9月の失業率は3年8カ月ぶりの低水準にまで改善した。
ただ中国経済の減速を受けて、外需や生産では気がかりな材料も目につき始めた。12日に公表されたユーロ圏の9月の鉱工業生産指数は前月比0.3%減少し、市場の事前予想より大きい落ち込みをみせた。ユーロ圏の全体の生産の先行指標として重視されるドイツの製造業受注も9月は3カ月連続で前月比マイナスとなり、先行きに影を落とす結果となった。
物価も欧州中央銀行(ECB)の量的緩和にもかかわらず、低迷が続く。欧州委員会は5日の経済見通しで16年の物価見通しを1.0%へ大きく下方修正。ECBが物価安定のための政策目標とする「2%未満で、その近辺」には遠い。
デフレ懸念が再び高まれば、企業の投資意欲をそぎ、低成長がさらに長引びく懸念もある。ECBのドラギ総裁は10月下旬、12月の理事会での追加緩和を示唆したが、デフレの脅威を払拭できるかは未知数だ。
ギリシャ経済も依然としてユーロ圏経済の頭痛のタネだ。7~9月期の実質成長率は前期比マイナス0.5%となり、0.4%のプラス成長だった前期から反転した。今夏にかけてEUなど債権団との金融支援交渉が混迷し、資本規制の導入などで国内経済が混乱した影響が表面化してきた格好だ。