体外受精の受精率や妊娠率を改善させることを目的として、妊娠を希望する女性から採取した細胞内小器官のミトコンドリアを自分の卵子に移植する臨床研究を、日本産科婦人科学会が14日までに了承した。
海外で約200例の報告があり、民間クリニックから移植の実施申請があった。同学会は「未知の問題が存在する可能性は否定できず、効果は十分検証されていない」と判断、治療ではなく臨床研究として進めることを認めた。
ミトコンドリアにはDNAがあるため、受精卵に移植すると、卵子と精子、ミトコンドリアと、3人分のDNAを持つ子供が生まれる可能性があり、倫理的な問題が浮上している。
臨床研究では、同一人物から卵子とミトコンドリアを採取、倫理問題を回避する。この治療法は、細胞のエネルギーをつくり出すミトコンドリアを移植することで、加齢に伴う「卵子の老化」で下がる受精率や妊娠率の改善を見込んでいる。
このほか同学会は、受精卵の染色体異常を調べ、正常な受精卵を選ぶ「着床前スクリーニング」(受精卵検査)の臨床研究を、流産を2回以上経験している35~42歳の女性100人を先行的な対象として進めることを了承した。〔共同〕