事件の概要を説明する沖縄県警の渡真利健良・刑事部長(中央)と幸喜一史・捜査1課長(右)、伊波一・うるま署長=9日午後3時40分、沖縄県うるま市、吉田拓史撮影
沖縄県うるま市の女性(20)が行方不明になってから約1カ月半。県警は殺人と強姦(ごうかん)致死の容疑で、シンザト・ケネフ・フランクリン容疑者(32)の再逮捕に踏み切った。過重な基地負担を抱え、米軍関係者による犯罪が繰り返されてきた沖縄。やり場のない憤りと悲しみが改めて刻まれた。
元米兵の女性遺棄事件
元米兵「申し上げられない」 殺人容疑再逮捕、認否保留
■黙秘に転じ、捜査難航
「計画性も残虐性もある。殺人容疑で終わらせるわけにはいかない事件だ」。捜査幹部の一人は取材に対し、こう語る。
県警によると、シンザト容疑者から供述を得たのは、5月19日に死体遺棄容疑で逮捕した前後のみ。その際、強姦目的で女性を襲って殺害したことを認めたという。
ただ、シンザト容疑者が黙秘に転じたため、捜査は難航した。刃物は見つからず、死後3週間程度たって白骨化していた遺体からは、遺留物が多くは採取されなかった。そうした中で、すでに得られた供述を裏付けるため県警は証拠集めに全力を挙げた。
女性のスマートフォンの位置情報の解析などから、うるま市塩屋の草むらを調べ、殺害現場と断定。女性のものとみられるイヤホンが見つかった。周辺の防犯カメラにはシンザト容疑者が被害者の後をつける様子も映っていた。
また、うるま市の水路では、水中の捜索で襲撃に使われたとみられる棒などを発見。2人は顔見知りではなく、女性が財布などを持っていないウォーキング中だったことからも、強盗ではなく強姦目的が立証できると判断した。
「容疑者の当初の自供といろいろな客観的証拠、裏付け捜査が符合した」。9日午後、うるま署で会見した幸喜(こうき)一史・県警捜査1課長は再逮捕の決め手をこう説明した。同席した県警の渡真利健良(とまりけんりょう)・刑事部長は「県民も心配していたと思う。必ず検挙するんだという捜査員の意気込みもある」と捜査への執念をにじませた。(井上怜、吉田拓史、大野択生)