時計を修理した宇津野友二さん=愛知県岡崎市の岡ビル百貨店、戸村登撮影
メーカーも修理を受けない古い時計をよみがえらせる時計店が、名鉄東岡崎駅(愛知県岡崎市)の上、「岡ビル百貨店」内にある。1958年の駅ビル完成と同時に開業した。昭和の気配漂うビルで、時計を直しながら街の移り変わりを見つめてきた83歳の店主、宇津野友二(うつのゆうじ)さん。今日も穏やかな表情で店に立つ。
最近、持ち込まれたのは、40年前の女性用クオーツ腕時計。動かなくなって久しいが、「高校入学の記念の品だから」と修理を頼まれた。一級時計修理技能士の宇津野さんは、片目に拡大レンズを装着し、微細な部品をピンセットでそっとつまみ、約60個の部品に分解する。一つひとつを洗浄してほこりやサビを除き、パッキングを交換して油を差し、組み立て直すのに約5時間。くしゃみ一つできない手作業が続く。
「古い時計も分解修理でたいがいは動く。でもメーカーは保証期間内の修理しか受けたがらないので、ちょくちょく依頼されます」。手間がかかるだけに料金は1万円ほどかかる。1、2週間は手元に置き、ちゃんと動くと確認してから「修理完了」と客に連絡する。「それでなきゃ、お金はいただけませんから」