関西国際空港と大阪国際(伊丹)空港の運営権売却が15日、オリックスと仏バンシ・エアポートの企業連合に正式に決まった。記者会見した両社の社長は今後の運営は「オール関西で地域に貢献する」との方針を繰り返し、運営会社「関西エアポート」に出資する30社近い関西企業への配慮を見せた。関西の空の玄関を、地元と一体でアジアを代表する空港にまで飛躍させることができるか、民間の手腕が試される。
「取締役に当社の宮内義彦シニア・チェアマンが就くのは30社の地元企業への気配りだ。地元出身でもあり、関西の関西による関西の企業にしようと万全の布陣をとった」。関西エアポートの役員にオリックスの顔役である宮内氏が名を連ねる意義について同社の井上亮社長はこう強調した。
関西エアポートに出資する30社・機構には関西電力や阪急阪神ホールディングス、パナソニック、ダイキン工業など地元を代表する大企業が名を連ねる。まさに「オール関西」の体制だ。そこに地元経済界の重鎮ともつながりの深い宮内氏を起用することで、空港運営にかけるオリックスの本気度を示したといえる。
関西エアポートの社長に就いたオリックスの山谷佳之副社長は「空港の収益よりも、関西に落ちる収益の方が大きい」と指摘。そのうえで、「(空港関連ビジネスで)直接的に出資先の収益に跳ね返ってくるというよりも、空港の収益が伸びれば関西が潤うという考え方で出資先とはお付き合いしたい」と述べた。
バンシのニコラ・ノートバール社長は、関西・伊丹の両空港は「世界25カ所のバンシ・グループの国際空港ネットワークの一員となる。年1億人以上の乗客にサービス提供するノウハウを生かす」と抱負を語った。
オリックス連合は関西エアポートの売上高を、契約最終年度の2060年3月期に15年3月期比7割増の2509億円まで引き上げることを目標に掲げる。
格安航空会社(LCC)の誘致などを進めるほか、空港内外で商業施設やホテルなどを拡充して着陸料以外の収入を増やす考えだ。具体的には航空機の「搭乗客のデータをより詳細に分析する」(山谷氏)ことで、テナントの配置などを季節に応じて柔軟に見直す。課題の欧米路線もバンシのルートを生かして「特に欧州線を増やす」(バンシ幹部)という。
両空港の運営権の対価は総額約2兆2千億円と巨額だ。毎年約500億円の支払いが必要になる。井上社長は長期契約のリスクについて「当社にとってそれほど大きな決断とは思っていない。両空港はポテンシャル・旅客も増しており、まだまだ拡大余地がある。採算的には問題ない」と懸念を一蹴した。
ただ、16年3月期の新関西国際空港会社の連結業績見通しは営業利益が533億円、純利益は257億円にとどまる。訪日客急増による収益拡大期でもこの水準で、オリックス連合は地元と一体となって収益性を高め、早期に民営化の「果実」を手にする必要があるといえそうだ。