政府は16日、2016~20年度の在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)について、米政府と実質合意したと発表した。5年間の総額は9465億円となる見通しで、11~15年度の実績を133億円上回る。厳しい財政事情から当初は減額をめざしていたが、物価や賃金水準の上昇分を反映するよう求める米側に配慮した。
思いやり予算額は日米両政府で結ぶ特別協定に基づいて決まる。11~15年度の水準を定めた現協定は来年3月に期限が切れるため、日米両政府は16~20年度の予算規模などを協議してきた。
今回の合意では、20年度の予算額は1899億円とし、16年度からの1年あたり平均額を1893億円とした。政府は15年度実績(1899億円)と比較し「現行と同水準」と説明するが、5年間の平均額をみると27億円多い。防衛省幹部は「5年前と比べ、物価や賃金水準が上がったのが大きい」と話す。
項目別にみると、日本が基地内で働く従業員に払う労務費が増える。図書館などの福利厚生施設で働く従業員を減らす一方、防衛装備品の修理工や整備工は上積みし、労働者数全体で553人増えるからだ。横須賀基地にイージス艦2隻を追加配備するなど、在日米軍が装備品を増強していることに対応する。
水道光熱費は日本側負担の割合を72%から61%に下げるため、減る可能性が高い。建物の補修などに使う施設整備費も減額の見通し。労務費や水道光熱費の削減分を充当してきたこれまでの制度を廃止するためだ。
思いやり予算は物価上昇や急速な円高を背景に1978年に導入した。負担の範囲が労務費や水道光熱費にも加わり、ピークの99年度は2756億円。その後は減少傾向が続いたが、現協定に基づく11~15年度は1881億円だった10年度の水準を維持するとしていた。