【北京=大越匡洋】中国の全国人民代表大会(国会に相当)常務委員会は21日、一人っ子政策を撤廃し、すべての夫婦に2人目の子どもを持つことを認める法案の審議に入った。早期に可決し、来年1月1日から施行する。成長力の低下につながる働き手の減少に歯止めをかける狙いだが、教育費の負担増などから2人目を望まない夫婦も多く、効果は未知数だ。
中国共産党は人口を抑制するために一人っ子政策を1979年から導入した。ただ少子高齢化が急速に進み、働き手の不足が潜在成長率を押し下げている。習近平指導部は今年10月末にまとめた2016年からの5カ年計画の草案で、すべての夫婦に2人目の出産を認める方針に転換した。
法案は迅速に可決される見込みで、新制度は16年1月1日から始まる。もっとも認めるのは2人目まで。3人目以降については厳しい産児制限を続けるため、「人権侵害」との批判が根強い状況は根本的に変わらない。
「2人っ子政策」への転換で、どれだけ人口構造のゆがみが是正できるかも不透明だ。中国当局は第2子出産の対象となる夫婦は約9千万組いるとし、50年までに働き手の人口が新たに3000万人増えるとみている。だが都市部では教育費や住居費の負担の重さから、2人目の子どもを望まない夫婦も多い。
収入に余裕がある30歳代以上の夫婦は共働きが一般的だ。妻の両親が子どもの面倒をみるケースが多いが「両親はすでに高齢で、子どもの世話はもう頼めない」(小学生の息子がいる30歳代の女性)。さらに「長年かけて積み上げた仕事のキャリアを捨て、子育てに専念することも難しい」(同)との事情もある。
育児用品や間取りを増やしたマンションなど、企業にとって新たな事業機会が広がる可能性はある。一方で、一人っ子政策に違反して生まれたために戸籍を持たない人々が全国に1300万人以上いる。無戸籍の人々は義務教育さえ受けられないが、問題を解決する道筋は見えていない。