【マドリード=竹内康雄】20日投開票されたスペイン総選挙は、首相指名など優越的地位のある下院(定数350)で、与党国民党が大きく議席を減らし、過半数を割り込んだ。ラホイ首相は政権樹立に向けて連立交渉に入ると表明したが、議会での安定多数の確保は難しい情勢だ。首相が進めてきた財政再建路線の後退は避けられない上、連立協議に失敗すれば再選挙が視野に入る。
21日の欧州市場では、政治の先行き不透明感を嫌気して、スペインの10年債利回りは上昇(価格は下落)し、一時約1カ月半ぶりの水準をつけた。主要株価指数のIBEX35は前週末から約3%下げて取引が始まった。
内務省によると、獲得議席は国民党(中道右派)が123、社会労働党(中道左派)が90で、新興政党のポデモス(急進左派)は69、シウダダノス(中道右派)は40だった。事前に有力視されていた国民党とシウダダノスの組み合わせは過半数に及ばず、社会労働党とポデモスの左派政党が組んでも届かない。
ラホイ首相は増税や歳出削減などの緊縮財政を通じてスペイン経済を回復軌道に乗せたが、失業率は高止まりするなど有権者の反発は大きかった。地元メディアは、今回の選挙結果を「どんな政権ができるか予測できない」と、スペイン政治が混迷の度を深めているとの識者の見方を紹介した。単独過半数を確保していた選挙前の国民党政権のように改革を進めにくくなるのは確実だ。
今後の展開は読みにくい。ラホイ首相はまず連立交渉にのぞむが、失敗すれば第2党の社会労働党が政権樹立に向けた準備に入る。国民党や社会労働党が中心となる少数与党政権が誕生する可能性もあるが、政権の安定や政策の実行力に疑問符がつく。一部には国民党と社会労働党の大連立に期待する見方もある。
連立交渉が成立しなければ、再選挙が視野に入る。ただ再選挙を経ても、どの党も単独過半数を獲得するのは難しいとみられ、再び連立協議が焦点となる。政治空白を嫌う金融市場が荒れる可能性もある。