東日本大震災の津波で大きな被害に遭った宮城県石巻市で被災者らを励まし、追悼の場にもなった「がんばろう!石巻」の看板が、2020年度までに整備する市内の復興祈念公園に移設される。制作者は、5年ごとに子供たちと一緒に立て替えることで、震災の記憶を次世代に伝承していきたいと願う。
看板は横約11メートル、縦約2メートルのベニヤ板製で、配管工事業、黒沢健一さん(44)の自宅兼店舗の跡に立つ。周辺地区には約4700人が住んでいたが、震災で津波と火災に見舞われた。市外で仕事中だった黒沢さんは翌日、地元に何とかたどり着いたが「一面がれきの海」。行方が分からない家族や友人を心配し、誰もがうつむいていた。
「みんなを励ますことはできないか」。高校時代の先輩らに相談し、津波で流れ着いた板や木ぎれで看板を作ることにした。震災1カ月後の4月11日に青や黒のペンキでメッセージを書き終えると、通りすがりの人たちが足を止め、涙を流した。次第に手を合わせる人が現れ、花束も置かれるようになった。
周辺の復興工事のため看板を撤去する必要があったが、国や県は2015年夏、市内に整備する復興祈念公園への移設を決定。黒沢さんは、5年に1度、子供たちと一緒に立て替えることを発案した。
16年4月11日は、看板が完成してちょうど5年。黒沢さんは、地元の市立門脇中の生徒たちと一緒に2代目を作る予定だ。2年生の小野寺遥奈さん(13)は「看板を見て、石巻に大変なことが起こったとあらためて知ってほしい」。黒沢さんは「次世代を担う子供たちが自分の手で看板に色を塗ることで、震災を語り継いでいければ」と話している。〔共同〕