奈良市の旧市街地「ならまち」では、昔ながらの民家や店舗の軒先につるされた赤い猿の縫いぐるみが目につく。「身代わり申(さる)」と呼ばれる厄よけで、2016年のさる年にちなんで人気が高まり、観光客も買い求めている。
真っ赤な体を丸め、頭と腹帯は白く、耳やしっぽはない。手足を縛られた姿から「くくり申」という名前もある。江戸時代前半に庶民の間で広まった「庚申(こうしん)信仰」で猿が神の使いとされ、災いが家の中に入らないようにとぶら下げるようになった。家族の人数分を用意し、背中に願い事を書き入れることが多い。
奈良町資料館(奈良市西新屋町)が、1日当たり50個を布と綿から手縫いする。全長約2~15センチの6種類。館長の南哲朗さん(53)は「一つ一つ心を込めて作っている。『おかげで無事に過ごせた』という話を1年後にたくさん聞きたい」と話す。〔共同〕