衆院予算委員会は8日、2015年度補正予算案の基本的質疑に入り、本格論戦がスタートした。序盤国会の焦点である消費税の軽減税率を巡り、安倍晋三首相は導入で税収が減っても「社会保障は削らない」と表明。野党は1兆円規模の財源確保のほか、低所得者対策としての政策効果に照準を当て、冒頭から対決色を強めている。
■財源
「約束している社会保障制度の充実はちゃんと行う」。首相は17年4月の消費増税時に導入する軽減税率の財源に関し、社会保障費を大幅に削減して捻出することはないとの認識を強調した。
16年度与党税制改正大綱は、導入に必要な1兆円の財源について「16年度末までに法制上の措置を講じ、安定的な恒久財源を確保する」と具体策を先送りした。確保している財源は、低所得者の医療や介護の自己負担に上限を設ける総合合算制度の見送りで捻出した4000億円だけだ。
民主党の山井和則氏が財源捻出には「医療、介護を削らないといけない」と追及すると、首相は「1兆円、社会保障を削減するとは決めていない」と気色ばんだ。だが具体的な財源について麻生太郎財務相は「今の段階で軽々に言えない」と述べるにとどめた。
■軽減効果
財源と並んで野党がやり玉に挙げるのが、軽減税率の政策効果だ。首相は「買い物の都度、痛税感の緩和を実感してもらえる」として低所得者の負担軽減になると強調したが、山井氏は財務省の試算を基に「1人あたり1日12円しか軽減されない」と指摘。民主党の枝野幸男幹事長は低所得者の恩恵が少ない軽減税率は「軽減」でなく単なる「据え置き」税率だとした。
財務省の試算では、世帯の収入額が多いほど負担軽減額は大きくなる傾向にあり、年間で最大約9千円の格差が生じる。枝野氏は「軽減される1兆円のうち、5千億円は年収500万円以上の世帯に使われる」と批判。首相は「絶対額ではなく比率で見るべきだ。低所得者の収入に対する消費税負担の割合は、高所得者よりも大きく引き下げられる」と反論した。
■公共料金
枝野氏は、電気や水道など公共料金に適用されないこともやり玉に挙げた。財務相は「利用者に過重な負担とならないよう法定料金、認可料金になっている。低所得者向けに水道料金の軽減もしている」と訴えた。
この日は外食との線引きが曖昧な問題は論点に上らなかった。野党は今後取り上げる構えで、政府内には「紛らわしい事例を詰められると答弁に窮するかもしれない」と懸念する声が出ている。