日銀は8日、2015年12月17、18日に開いた金融政策決定会合での委員らの発言を「主な意見」として初めて公表した。金融市場について「不安定でリスクは依然下方に厚い」との意見があり、物価上昇の「下振れと後ずれリスク」を指摘する声もあった。日銀はこの会合で「異次元の金融緩和」を円滑に進める補完策を決めたが、緩和長期化に身構える委員の姿が浮かび上がった。
日銀は12月会合から政策委員らの「主な意見」を会合終了後速やかに公表すると決めていた。各委員が会合での自分の発言を300字程度にまとめ、執行部は委員が提出した字句は変えずに経済情勢や物価などの項目別に整理して公表した。
「原油価格が想定以上に下がっており生鮮食品を除く消費者物価指数(CPI)の上昇ペースがより緩やかになるリスクが出てきている」
「主な意見」で目立ったのが、金融市場の異変が日本の景気や物価に与えるリスクへの警戒だ。日銀は16年度後半ごろに物価2%上昇を達成するとしているが、原油安の加速などを受け、1月会合で見通しの下方修正を議論する。「物価の基調は改善を続けている」との意見も複数あったが、先行きへの不透明感が強まってきた。
「日銀が目標達成のための手段を有し、それを実施する意思があることを示すことを最優先すべきである」
金融政策についてはこんな決意表明のような意見もあった。日本経済が「経済の好循環を推進する正念場」に差し掛かるなか、日銀は国債買い取りの平均残存期間の延長などを盛り込んだ異次元緩和の補完策を6対3の賛成多数で決めた。
「補完措置によってかえって金融緩和の限界が意識され、市場との対話が難しくなる」
補完策導入には慎重な意見もあった。債券市場に出回る国債が少なくなるなか、日銀の金融緩和の限界が指摘され始めている。日銀はこれ以上追加緩和できないから補完策でお茶を濁したとの思惑が広がることを懸念した意見とみられる。
補完策の公表後、日経平均株価は下落し、円相場もじりじりと上昇し始めている。「緩和をより長い期間継続する可能性が出てきている」なか、市場との対話をどう進めていくかがますます重い課題になっている。