1500メートルで2位に入った高木美帆=AP
スピードスケートの世界選手権最終日は5日、ノルウェー・ハーマルで男女各2種目があり、高木美帆(22)=日体大=が総合3位で銅メダルを獲得した。日本勢の表彰台は2000年銅の田畑真紀以来で、女子では橋本聖子、上原三枝、田畑に続き4人目。
高木美は初日は500メートル1位、3000メートル6位の総合首位で折り返した。この日の1500メートルは1分55秒81で2位。最終種目5000メートルは7分10秒14で6位と踏ん張り、日本女子17年ぶりの快挙を成し遂げた。総合優勝はイレイン・ブスト(オランダ)。佐藤綾乃(高崎健康福祉大)は10位、高木菜那(日本電産サンキョー)は13位でともに最終種目に進めなかった。
男子1500メートルは中村奨太(ロジネットジャパン)が1分46秒41で7位となり、最終種目の1万メートルへ進んだ。
大会はオールラウンダーの世界一決定戦で、スプリント力と持久力の両方が求められる。2日間で男女各4種目が実施され、タイムを換算した総合得点で争われた。
■「自分のレース」に集中、日本女子17年ぶり快挙
最強のオールラウンダーを決める憧れの舞台で、高木美が表彰台に上がった。「やっとできた思いがある。名を刻めたことがうれしい」。日本女子17年ぶりの快挙に喜びがにじんだ。
総合首位で迎えた最終日。得意の1500メートルで世界と渡り合った。この種目バンクーバー五輪金のブスト(オランダ)と0秒32差の2位。前日からの総合1位を守ったまま最終種目5000メートルに進んだ。
総合4位との差は約13秒。このタイム差を守り切れれば表彰台が決まる。だが、高木美は「自分のレースをしようと。タイムをいかに縮められるかに集中した方がいい結果を生む」。自らの滑りに集中した。
1周33~34秒のラップを刻んでいく。3800~4200メートルで35秒台に落としたが「このままでは今までの3種目が無駄になる」。残り2周は34秒台で粘った。6位に入り、総合のメダル圏内を守った。
今季、ナショナルチームではオランダ人コーチの下、特にスタミナを強化した。高い強度を設定して長い時で3時間半、自転車をこぎ、氷上トレーニングもこなした。「全体的な力が底上げされた」。鍛錬の成果がここぞで発揮された。
「日本の選手でも『できる』ということが証明できた」。3世紀にまたがるスピードスケートで最古の歴史を持つ大会(初開催は1889年)で高い総合力を示した22歳。短距離だけではない日本の強さを世界に示してみせた。(榊原一生)
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〈世界選手権〉 オールラウンダーの世界一決定戦。男女の500メートルと1500メートルのほか、男子は5000メートルと1万メートル、女子は3000メートルと5000メートルの計4種目の総合ポイントで争う。スプリントと持久力の両方が求められる。主要な国際大会は他に、2日間で500メートル、1000メートルを2回ずつ滑り、総合得点で最強の短距離選手を決める「世界スプリント選手権」、五輪と同じ単一種目で優勝を争う「世界距離別選手権」がある。3大会で最も歴史が古いのは1889年に始まった世界選手権。世界スプリント選手権は1970年、距離別選手権は1996年にそれぞれ開かれた。