【ドバイ=久門武史】アラビア半島の6カ国でつくる湾岸協力会議(GCC)は9日、緊急外相会合をサウジアラビアの首都リヤドで開いた。サウジがイスラム教シーア派の宗教指導者を処刑後、抗議するイランの群衆がサウジ大使館を襲撃した事件について「イランがテロ行為の責任を負う」として強く非難する声明を発表。イランの「内政干渉」を批判した。
サウジのジュベイル外相は記者会見で「イランが現在の政策を続けるなら、追加措置を検討する」と述べ、対抗措置を強める可能性に言及した。サウジには湾岸アラブ諸国の結束を強調する思惑があるが、9日の声明は、イランを非難する以上の強い措置では足並みがそろわないことを示す。
サウジは3日にイランとの外交関係を断ち、GCC加盟国ではバーレーンが4日に同調した。ただアラブ首長国連邦(UAE)は外交関係の格下げ、クウェートとカタールは大使召還にとどめており、加盟国の対応には温度差がある。
サウジは10日にエジプトで開くアラブ連盟の外相級会合でも支持を取り付け、イランへの圧力を強めたい考えだ。アラブ連盟にはイランが影響力を持つイラクなどが含まれており、どこまで厳しい態度で一致できるかは見通しにくい。
一方、イランのザリフ外相は8日、イエメンでのサウジ軍機による空爆で、イラン外交施設の現地職員2人が死亡したなどとする書簡を国連の潘基文事務総長に提出した。サウジが「死傷者を出す多くの直接的な挑発行為をしている」と非難。同時にイランの立場について「隣国との緊張を高めることに関心も願望もない」と強調した。
サウジによる宗教指導者の処刑を巡っては、中東のシーア派の間で抗議の動きがくすぶっている。8日にはイラン各地で抗議集会が開かれたほか、ロイター通信によるとバーレーンでも約200人が抗議デモに加わり、警察と衝突した。バーレーンはシーア派の住民が多数を占め、スンニ派のハリファ王家がイランの影響力拡大を警戒している。