国際原子力機関(IAEA)は22日、日本の原子力規制委員会の活動を検証する報告書を公表した。独立性、透明性の確保や権限強化を評価する一方、原子力施設の検査がより柔軟かつ効果的に進められるよう、関連法令を改正することなどを求めた。国内では原子力発電所の再稼働が進みつつあり、規制委も専門性の向上に取り組む必要があると指摘した。
東京電力福島第1原発事故によって信頼が失墜し、体制を刷新した日本の原子力規制に対する初の国際的な評価となる。IAEAの総合規制評価制度に基づき、各国の原子力規制当局の責任者ら24人が検証にあたった。
報告書では「福島第1事故の教訓を新たな規制の枠組みに迅速かつ実効的に反映させた」と指摘。自然災害や重大事故への対策強化を課す新規制基準の導入などを評価した。意思決定の独立性や透明性の確保において「(必要な)法的枠組みの構築や国家組織上の位置付けを行った」とした。
原発などを対象とする検査については課題を指摘した。原子炉等規制法に基づいて四半期ごとに実施される保安検査などは、定型的な項目チェックにとどまる傾向がある。海外のトラブル事例なども考慮してリスクや重要度を判断し、機動的かつ柔軟に検査できるよう、法令の改正を求めた。
調査チームのリーダー、仏原子力安全局コミッショナーのフィリップ・ジャメ氏は、今後についても「これまでと同等の責任感を持って(活動を)継続する必要がある」と注文をつけた。
▼IAEAの総合規制評価 国際原子力機関(IAEA)が原子力施設の安全にかかわる加盟国の規制や体制を検証する制度。各国の規制当局関係者が参加し、毎年数カ国を対象に実施。課題があれば勧告や助言を通じて是正を求め、改善の状況も確認する。日本は経済産業省の原子力安全・保安院が2007年に評価を受け、規制機関の独立を徹底する必要性を指摘された。