三省堂(東京)などの教科書会社が検定中の教科書を教員に見せ、意見を聞いた謝礼などとして金品を渡していた問題で、小中学校の教科書を作る22社のうち10社が延べ4千人に対して同様の行為をしていたことが22日、文部科学省のまとめで分かった。教科書の公正な採択に疑いを招きかねない行為が、教科書業界にまん延していたことが浮かび上がった。
同省は昨年12月、最初に不正が発覚した三省堂を除く21社に対し、過去の不適切な行為を自己点検し20日までに報告するよう求めていた。対象期間は小中学校の教科書が検定中だった2009~10年度と13~14年度の通算4年間。
22日、同省が公表した各社の点検結果によると、三省堂を含む22社中12社が検定中の教科書を教員らに見せていた。全国から教員を呼ぶ集会や、各地の営業所が開く小規模な会合などが計2049回開かれ、延べ5147人の教員らが参加していた。
このうち意見を聞いた謝礼などの名目で金品の提供があったのは10社。すでに判明している三省堂、東京書籍(東京)、数研出版(同)の3社に加え教育出版(同)、光村図書出版(同)、大日本図書(同)など7社が提供していた。
3千~5万円の現金や3千~1万円相当の図書カードを渡していた事案が10社で計1079回あり、対象教員は延べ3996人に上った。この中には受け取りを拒否したり、返したりした教員も一定数いたとみられる。
最大手の東京書籍は発行する全20教科の教科書について、こうした会合を691回開催。延べ2245人を対象に1回当たり3千~3万円を渡していた。
文科省は検定中の教科書を外部に見せることを禁じており、教科書会社でつくる教科書協会(東京)は自主ルールで教員らへの金品提供をしないことを定めている。同省は「各社の認識が甘く、常態化していた面がある」と指摘。今後、各地の教育委員会を通じて採択への影響がなかったか調べる。