建設現場でアスベスト(石綿)を吸い込み肺がんなどを発症したとして、大阪府などの建設労働者と遺族計33人が国と建材メーカー41社に計約6億9千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が22日、大阪地裁であった。森木田邦裕裁判長は一部の原告について国の責任を認め、計9746万円の支払いを命じた。メーカーへの請求は棄却した。
建設アスベスト訴訟で「勝訴」の紙を掲げる原告側の弁護士(22日午後、大阪地裁前)
同種訴訟は全国6地裁で起こされ、判決は4件目。国は3件連続で敗訴した。
原告は建設現場で働いていた元労働者と遺族ら計33人。
原告側は国について、遅くとも石綿を有害物質に指定した1971年には防じんマスクの着用義務付けなど適切な対策を講じるべきだったのに「95年まで義務付けなかったのは違法」と訴えた。
また、メーカーは「遅くとも71年には製造販売を停止すべきだった」と指摘。石綿を含まない代替品の販売後も石綿建材を売り続けるなど「確信犯的に危険な製品を製造販売していた」とした。
先行訴訟の判決が、どの企業の製品で健康被害を受けたかが具体的に示されていないとしてメーカーへの請求を退けたことから、今回の原告側はは、従事していた作業内容などから原告ごとの原因企業を絞り込んだ。
これに対し国は、問題を放置しておらず適切な対策を取っていたと反論。メーカーは「実際に発症原因となった建材を特定できていない」と主張し、いずれも請求棄却を求めていた。
これまでの3件の判決では、2012年5月の横浜地裁判決が原告敗訴としたが、続く東京地裁判決(同年12月)、福岡地裁判決(14年11月)は国が95年まで防じんマスク着用を義務付けなかったのは「著しく不合理で違法」として国に賠償を命じた。一方、メーカーの責任はいずれの判決も認めなかった。29日には京都地裁で5件目の判決が言い渡される予定。