SF作家、小松左京さん(1931~2011年)の著作権管理事務所「小松左京ライブラリ」(神戸市)は27日までに、人工知能(AI)の研究グループに全作品のテキストデータを提供したと発表した。難しいとされる人工知能による長編小説執筆の実現に向け、分析用の資料として活用してもらう。
同ライブラリを運営する小松さんの遺族は、未完の遺作「虚無回廊」を人工知能が完結させることに期待を寄せている。
提供を受けたのは、12年からSF作家、星新一さん(26~97年)のテキストやプロットを分析し、人工知能に短編小説を創作させる研究を進めてきた、公立はこだて未来大(北海道函館市)の松原仁教授らのグループ。星さんのプロジェクトでは、17年ごろの「新作発表」を目標に掲げている。交友もあった日本を代表するSF作家2人がそろって研究対象となる格好だ。
同ライブラリによると、データを提供したのは約1年前で、今年で小松さんの没後5年となるのを機に発表した。松原教授は「星さんらしさを比較考量する資料として、小松さんのデータを一部使い始めている。将来的には小松さんの作風を研究したい」と話す。
また、同ライブラリは代表作「日本沈没」の直筆原稿などを、大阪芸術大(大阪府)に寄託することも発表した。授業や研究で用い、次世代の創作活動に生かしてもらうのが目的だという。〔共同〕