愛知労働局は29日、2015年10月末の県内の外国人労働者数が前年比12.0%増の9万4698人だったと発表した。2年連続で増加し、過去最高を更新した。人手不足を背景に、製造業や建設業、外食・小売りなど幅広い業種で外国人の雇用が拡大している。在留資格の緩和を求める声がある一方で、トラブルの増加も課題になっている。
愛知県は東京都(約28万人)に次いで全国で2番目に多かった。外国人を雇用する事業所は1万2242カ所で、前年に比べ9.6%増えた。事業規模別では30人未満が全体の3割を占め、500人以上の事業所は17.7%にとどまった。
産業別では製造業が4.7万人で最も多く、建設業が前年に比べて42.5%増の3200人、宿泊業・飲食サービス業も21.0%増の7900人と大幅に増えた。
国籍別でみると、ブラジルが最多の2.7万人で、中国が2.4万人で続く。フィリピンも前年から15.0%増の1.5万人に増え、ベトナムやネパールも伸びた。
在留資格別では、永住者や定住者など「身分に基づく在留資格」が5.5万人と全体の半分以上を占めた。「技能実習」が前年比18.2%増の1.9万人、留学生がアルバイトなどで働く「資格外活動」が26.7%増の8500人に増えた。
そば・うどん店を運営するサガミチェーンは、単純計算で県内1店舗あたり外国人が1人いる。「人が集まりにくい都心部を中心に多い」(経営企画部)という。中国人が中心で、最近は東南アジア系も増えている。別の外食チェーンも「名古屋市はパートが集まりにくく、スタッフの1割ぐらいは外国人」と話す。
愛知県は国家戦略特区を活用し、外国人労働者を受け入れる在留資格の拡充を国に提案している。大村秀章知事は「県内産業の国際競争力を維持強化するために、海外からの人材受け入れを検討すべきだ」と語る。
ただ、外国人雇用をめぐるトラブルは多い。名古屋北労働基準監督署は22日、小牧市のプラスチック加工会社を、外国人技能実習生に対し違法残業や賃金未払いがあった労働基準法違反の疑いで書類送検した。同様のトラブルは各地で多発している。
明治大学の加藤久和教授は「人手不足が深刻化するなか、外国人の活用は国全体で取り組まねばならない。技能実習などは労働実態がわかりにくく、受け入れ拡大に向けきちっとした制度設計をすることが重要だ」と指摘している。
(松尾洋平、竹内宏介)