愛知県瀬戸市の無職男性(当時22)が事情聴取中に救急搬送されて死亡したのは、県警の警察官と瀬戸市消防本部の救急隊員の過剰な自殺防止措置が原因として、男性の両親=静岡県掛川市=が愛知県と瀬戸市に約8500万円の支払いを求めた国家賠償請求訴訟の判決が2日、静岡地裁であった。細矢郁裁判長は、県と市に約3900万円の支払いを命じた。
判決によると、男性は2009年10月、知人の車を傷つけたとして通報され、瀬戸署員4人に自宅で事情聴取を受けた。男性が包丁で自分の首を切り、舌をかみ切ろうとしたため、署員は自殺防止のために男性の口にタオルを入れて救急車で搬送。男性は搬送中に一時心肺停止となり、18日後に死亡した。
細矢裁判長は「タオルを挿入されたことで窒息し、心停止に至った」と認定。署員らが気道確保などの注意義務を怠ったとした。一方で車に傷を付けたことの発覚などによる「ストレスが心停止に影響した可能性が皆無とまではいえない」と男性の落ち度も認め、賠償額を減額した。
瀬戸市の伊藤保徳市長は「極めて特殊な状況下で救命救急活動をできる限り実施しており、主張が認められなかったことは遺憾。判決の内容を確認した上で対応を検討したい」とのコメントを発表した。愛知県警の富田敏弘・監察官室長は「判決内容を検討した上、今後の対応を決めます」とコメントした。