明治期の作家、尾崎紅葉(1868~1903年)の代表作「金色夜叉」の直筆原稿6枚を貼り合わせた巻物1巻が見つかった。日本画家、鏑木清方(1878~1972年)の絵2枚が原稿の前後につなげられていた。紅葉の創作過程がうかがえる貴重な資料という。
近代文学研究者で秀明大学長の川島幸希さんが東京都内の古書店で購入した。巻物は長さ3メートル50センチ、幅が27センチ。
清方の絵は、物語の主人公・貫一が自分を裏切った宮を足蹴(あしげ)にする有名な場面や、宮が火鉢で暖を取る場面など。巻物が入った箱には「昭和二十五年七月 清方装画」と書かれていた。
川島さんによると、直筆原稿は大学図書館などがごく一部を所蔵しているが、ほとんどの部分が見つかっていない。
直筆原稿を鑑定した早稲田大の宗像和重教授(近代文学)は「紅葉は校正、推敲(すいこう)を重ねたことで知られる。見つかった原稿には塗りつぶした部分などが多く、どのように作品が作られていったのかを探る貴重な資料だ」と話している。〔共同〕