【シリコンバレー=兼松雄一郎】米連邦捜査局(FBI)は昨年12月にカリフォルニア州で起きたテロ事件の容疑者のスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」から、アップルの助けを借りずに情報を取り出すことに成功した。FBIからのセキュリティーの解除命令をアップルは拒否し、法廷闘争に発展していたが、ひとまず収束する。
米政府は28日、連邦地裁にアップルにセキュリティー解除を命令する必要がなくなったとの報告書を提出した。司法省は同日出した声明でデータ抽出で「第三者の助けを借りた」と説明した。具体的な方法は明らかにしていない。日本のサン電子傘下のイスラエル企業のセレブライトの技術が使われたとされる。
カリフォルニア州で昨年12月に起きたテロ事件でFBIが容疑者のiPhoneから情報を得られず、司法省が2月、セキュリティーの強制解除を求めて連邦地裁に申し立てた。地裁は解除を命じたが、アップルは個人情報保護を理由に拒否していた。司法省は自力での解除に成功したことで提訴を取り下げた。
アップルは今秋発売予定のiPhoneの新モデルや、基本ソフト(OS)の更新でさらにセキュリティーを強化する方針。FBIが新製品のセキュリティーを解除できる保証はない。法廷闘争はひとまず収束したが、犯罪捜査とプライバシー保護をめぐる両者の対立は続きそうだ。
米議会では、上院議員らがIT(情報技術)機器の過度の暗号化に罰金を科す仕組みを導入しようとする動きも出ている。IT業界の大半の企業はアップルを擁護する立場で、業界を巻き込んで当局との対立が激しくなっている。