映画「ダイビング・ベル」から=福岡アジア映画祭実行委員会提供
韓国の旅客船セウォル号が沈没し、304人の死者・行方不明者を出した事故から16日で2年になる。事故を取材したドキュメンタリー映画「ダイビング・ベル」が今月、福岡と大阪、東京で上映される。韓国政府の事故への対応を強く批判し、波紋を広げた作品だ。大阪と東京では初公開となる。
事故は2014年4月、韓国南西部の珍島(チンド)沖で起きた。犠牲者の大半が修学旅行中の高校生だった。運航会社や監督機関の安全管理のずさんさ、乗客を置き去りにして逃げた乗組員の無責任さ、海洋警察の救助態勢の不十分さといった要因が重なって被害が拡大したとされるが、真相究明は進んでいない。
「ダイビング・ベル」は潜水機器の名称。映画は、この機器を持つ民間業者が事故直後、捜索・救助活動への協力を申し出たが、受け入れられないまま時間が過ぎ、成果が上げられなかった経緯を追う。韓国政府や海洋警察の事故後の対応を批判的に描いている。
14年秋の釜山国際映画祭に出品されたが、釜山市が「政治的な中立性を欠く」として上映自粛を求めた。だが、映画祭側はこれを拒否。対立は尾を引き、今年2月には市側が映画祭幹部を再任させなかったため、内外の映画人が表現の自由や映画祭の独立を訴えて反発を強めるなど、韓国では映画界を越えて社会を揺るがす事態となっている。
日本では昨年、福岡アジア映画祭で初公開された。同映画祭実行委員会代表の前田秀一郎さんが、この作品の共同監督のアン・ヘリョンさんから「事故から2年経っても問題は解決していない。そのことを日本でも多くの人に知ってもらいたい」と相談を受け、3都市での上映に協力した。前田さんは「行政の映画祭への介入は絶対におかしい。映画祭の独立を守ろうとする映画人に共感し、連帯したい」と話す。
24日午後1時と4時、福岡市中央区大名2丁目のアンスティチュ・フランセ九州5階ホール▽25日午後7時、大阪市北区曽根崎新地2丁目のビジュアルアーツ専門学校・大阪「アーツホール」▽27日午後7時、東京都中野区のなかのZERO小ホール。いずれも前売り1500円(当日1800円。前売り完売の場合は販売なし)。問い合わせは福岡が福岡アジア映画祭実行委(092・733・0949)、大阪がアジアプレス大阪事務所(06・6373・2444)、東京がArtist Action(artistaction1229@gmail.com)。(佐々木亮)