避難所では、厳しい生活環境やストレスから体調を悪化させる人が多く、最悪の場合は亡くなる危険がある。こうした「災害関連死」をなくそうと、避難生活で目配りが必要な人に気づこうと呼びかける冊子とポスターができた。「あの人、トイレに行けてないみたい」「1人でぼうっとして動かない」。あの人大丈夫かな、と思ったら声をかけ合ってほしいという。
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熊本地震 災害時の生活情報
タイトルは「『ハイリスク予備軍』の人を見つけよう」。阪神大震災をきっかけに生まれた「震災がつなぐ全国ネットワーク」が、日本財団の助成を受けて3月に作った。
冊子では、避難所で何とか生活ができていても、坂をすべり落ちるように健康状態が悪くなる恐れのある人を「ハイリスク予備軍」と呼ぶ。ボランティアらが過去の災害で支援した被災者の様子を紹介しつつ、見過ごされがちだが重要なポイントをまとめた。
たとえばトイレ。我慢すれば、脱水症状や高血圧、膀胱(ぼうこう)炎の引き金になることがある。ある80代の女性は便秘が続き、「ひざが悪くて和式トイレでしゃがめない」と話していた。気づいたボランティアが役所の職員に申し出て、洋式便座を手配した。被災者がトイレに行かないのは、汚い、暗い、寝床から遠いことが理由の場合もある。
「1人でぼうっとして動かない人」にも注意が必要だ。一日中動かないで過ごしていると、歩行が難しくなったりエコノミークラス症候群になったりしかねない。「炊き出しや物資配布に気づいていない人」は、障害者や外国人で、正しく情報が伝わっていない可能性がある。「ずっと同じ服を着ている人」は、避難所から自宅へ戻る移動手段がなくて困っているかもしれない。
ほかのポイントは、食べ物がそのまま残っている▽あの子、こんなに乱暴だった? 甘えん坊だった?▽物資を取りにくそうにしている▽あのお母さん、どこで授乳しているんだろう▽あの人、いつ休んでいるんだろう――がある。
ネットワークに加盟する認定NPO法人「レスキューストックヤード」(名古屋市)の浦野愛さんは「自分からは困っていることを言い出せない人が多い」と話す。実際に気になる人がいたら、「一緒にトイレに行きませんか?」と話しかけたり、看護師や避難所の運営者らに「このおばあちゃん大変そう」と伝えたりしよう。「専門知識がない住民同士やボランティアでも、気づく目と、つなぐ先を知っていれば、できることがたくさんあります」
冊子では、ハイリスク予備軍を増やさない「10の知恵」も紹介。避難所に貼り出して使えるポスターも併せ、震災がつなぐ全国ネットワークのブログ(
http://blog.canpan.info/shintsuna/archive/1395
)からダウンロードできる。(十河朋子)