湯布院の湯の坪街道。外国人旅行者にも人気の観光地だが、20日午後の通りは閑散としていた=大分県由布市、柴田秀並撮影
熊本県などでの一連の地震の影響で、九州を訪れる外国人旅行者が急減しつつある。「地震が少ない」というイメージも傷つき、ツアーのキャンセルも相次いでいる。政府や観光業界がめざす、さらなる外国人客の誘致戦略にも影を落としかねない。
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福岡市の博多港。20日朝に着岸した韓国・釜山港発のフェリー「ニューかめりあ」から降り立った乗客はまばらだった。普段は350人ほどだが、一連の地震のあとは急減。この日は100人ほどにとどまった。
乗客の9割は韓国人が占め、大半が阿蘇(熊本県)や別府(大分県)といった代表的な観光地をツアーでまわる。ただ、いつもは駐車場に列をなすツアーバスもこの日は1台だけ。ゴールデンウィーク(GW)をはさんで5月中旬までのキャンセル数は約2400人分にのぼっている。
2011年の東日本大震災後、地震や放射能への不安から外国人旅行者は全国的に急減した。東北地方から離れたこの航路も乗客が減り、回復まで3カ月かかった。今回、足元の九州で地震が起きたことで、影響はさらに大きくなる可能性がある。フェリー運航会社の幹部は「これまでもいろいろあったが、今回が一番ひどい減り方だ」。
九州を昨年訪れた外国人旅行客は前年より7割多い283万人で、国内全体の14%。韓国からが42%、台湾や中国を含めたアジアからが全体の7割を占める。九州はアジアから近く、温泉などの観光地が豊富なほか、比較的地震が少ないことも人気の理由だった。