4号炉を覆う予定の新シェルター=3月23日、ウクライナ・チェルノブイリ、杉本康弘撮影
完成間近の「新シェルター」の内部をのぞくと、青と灰色の防寒着に安全帯やヘルメットをつけた作業員が、高所で鉄骨をつないでいた。その先には、表面にさびが浮かぶ「石棺」が見える。史上最悪の事故から30年になるウクライナのチェルノブイリ原発では今、約1100人が新シェルターの建設を進めている。
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幅257メートル、高さ109メートル、長さ162メートル。主に鉄骨でできたかまぼこ形の巨大構造物だ。重さは東京スカイツリーの鉄骨総量に匹敵する3万6千トン。レールに載せて330メートルを33時間かけて動かし、劣化が著しい石棺を上から丸ごと覆う。今年11月に移動させ、来年末にはすき間を埋める密封作業も終えるという。
新シェルターを組み立てる場所の被曝(ひばく)線量は毎時5マイクロシーベルト未満。防塵(ぼうじん)マスクを着ける作業員はいない。だが、移動先の石棺付近にはマスクを着けた作業員が見えた。除染後の今も線量が毎時100マイクロシーベルトを超すという。
石棺の中には、「核燃料含有物質(FCM)」と呼ばれる危険物質が手つかずで大量に残る。放射線量が高く、容易に近づけない。
爆発した4号炉には当時、核燃料が210トンあまりあった。このうち推計で3~5%が大気中に出た。残りは高温で溶け落ち、建屋のコンクリートや金属、消火活動でヘリから投下された砂や鉛などと混ざった。溶岩が固まったような「ゾウの足」と呼ばれる塊や、細かいちり状など様々な形で存在する。