サルにも自分の記憶の確かさを評価する能力があることを発見したと、順天堂大と東京大のグループが米科学誌サイエンスで発表した。この能力はこれまで、高度な脳を持つ人間特有のものと考えられていたという。
グループは、サルに四つの図形を覚えさせた後に、一つの図形を見せて、前に見た図形と同じかどうかを答えさせる訓練をした。さらに、答えた後に、その答えが正しければジュースが多く出る一方、間違っていればまったく出ない「ハイリスク・ハイリターン」となる表示と、正解か不正解かにかかわらず選べば必ずジュースが少し出る「ローリターン」となる表示のどちらかを選択させる実験をした。
その結果、正解しているときにハイリスク・ハイリターンを選ぶ確率が高かった。グループは、サルが自分の記憶に自信があるときにハイリスク・ハイリターンを選び、自信がないときにローリターンを選ぶ傾向があることがわかったとしている。
また、この実験の際に、機能的磁気共鳴断層撮影(fMRI)で脳の状態を調べると、記憶の確かさを評価している領域は、前頭葉の一部にあることが判明した。この領域の活動を薬で一時的に止めると、記憶するだけの課題はこなせるが、記憶の確かさの評価はできなくなり、それぞれ別の神経回路を使っていることが明らかになったという。
順天堂大の宮下保司特任教授は「複雑な脳の働きの解明につなげていきたい」と話す。(瀬川茂子)