渋谷駅前のスクランブル交差点を青信号に変わって約20秒後に撮影。約40秒後に撮った写真との2枚で通行人を数えた。左上がハチ公前広場=8日午後6時13分、東京都渋谷区の「Qフロント」屋上から
いわく「世界一混み合う交差点」。いわく「1回の青信号で、多い時で3千人が渡る」――。JR渋谷駅前のスクランブル交差点のことである。都市伝説めいたうわさ、それって本当?
世界一はともかく、3千人は根拠があるのではないか。ネットで検索すると、渋谷センター街のホームページに約3千人とあった。
根拠を聞くため、渋谷センター商店街振興組合の小野寿幸理事長(75)を訪ねた。ところが、「調べたことはない。地元の人や区議の間で、それくらいだと言っている」。10年ほど前まで2千人だったが、近年は外国人観光客なども増えたため3千人に変わったという。ビル5階のオフィスから見える交差点を指さし、小野理事長が言った。「ハチ公前広場の人のたまり具合は、金曜の夜や土日はざっと見ても1千人を超す。それが四方八方から渡るのだから、そのくらいになるだろう」
渋谷区にも調べた数字の有無を尋ねたが、「そういうものは見つからなかった」との回答だった。
ふと思い出したのが、NTTドコモが作った2年前の仮想動画。スクランブル交差点を通行人全員が「歩きスマホ」で横断する様子をコンピューターグラフィックス(CG)で再現し、話題を呼んだ。
通行人は1500人の設定で、ドコモに聞くと、東京メトロの広告を参考にしたという。《渋谷スクランブル交差点、30分の通行量は千代田区の人口とほぼ同じ約4万5千人!》。2011年春に駅のポスターなどで使われた広告だ。1分に換算すると、確かに1500人になる。
ところが、東京メトロに「30分で約4万5千人」の根拠を尋ねると、なんと、センター街のホームページだった。青信号1回で3千人、30分間に青信号が15回として算出したそうだ。
振り出しに戻った。