講演する梶田隆章さん=天田充佳撮影
昨年のノーベル物理学賞を受賞した梶田隆章・東京大学宇宙線研究所長を招いた記念イベント「梶田隆章さんから 科学をめざす君たちへ」(主催・朝日新聞社、後援・東京大学宇宙線研究所など、協賛・三井金属、三井造船、富士通)が3月29日、東京・有楽町朝日ホールで開かれた。梶田さんが研究生活や科学を学ぶ意義などについて講演。高校生や大学生からの質問に答える「教えて梶田さん」や、研究を支えた企業の報告もあり、約700人が聴き入った。
■データと理論が矛盾「でも……」
まずニュートリノとは何かというイメージをつかんでもらいたい。電子から電気を取り、重さもほとんど取った素粒子で、すり抜ける性質がある。地球を何個も重ねてもすり抜けてしまう。地球を1万個くらい並べれば、1回くらいは何かの物質とぶつかる。
そのぶつかるチャンスを逃さずに観測して研究するのが我々がやっているニュートリノ研究。宇宙線が大気に降り注いで生まれたものを観測している。
もともとは、素粒子の間に働く三つの力が実は同じだという大統一理論を確かめようと研究が始まった。理論が正しければ陽子が崩壊する。これを観測しようとカミオカンデという装置をつくった。先生や私も含めた大学院生が作業服を着て、トロッコに乗って鉱山に入り、光電子増倍管を1個1個取り付けた。
陽子崩壊を探すときの邪魔者が、ニュートリノだった。解析するためソフトを改良して観測データに適用すると、ミューオンニュートリノが予想よりずっと少ない。電子ニュートリノは予想通り。どこが間違っているんだろうと探し始めた。