「ケン」と呼ばれる第1歩脚を振り上げ、威嚇し合うホンチ
「ホンチ遊び」をご存じだろうか? 桜が散った後のこの時期、「ホンチ」と呼ばれる小さなクモが、オス同士で戦う習性を利用したクモ合戦のことで、戦後しばらくの間、横浜の子どもたちを熱狂させた。胸をときめかせたこの遊びを後世に伝えようと、還暦を超えた当時の少年たちが再び集い、毎年5月の連休に大会を開いている。
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ホンチは体長1センチほどのクモ「ネコハエトリ」のオスのことで、英語ではジャンピングスパイダーと呼ばれる。4~5月の繁殖期にオス同士が出会うと、前脚を振り上げ、体を左右に揺らして威嚇し合う。やがて相撲さながらに組み合う力比べが始まり、負けた方が逃げ出す形で勝負がつく。
この強い闘争心に着目し、板の上で2匹を競わせたのが「ホンチ遊び」だ。遊ぶものが乏しかった1960年代まで、横浜の子どもたちを夢中にさせた。「横浜ホンチ保存会」の前川隆敏さん(64)によると、当時は街なかのマサキの生け垣などにもたくさんいて、大きいものや、強いと信じられた腹部が金色の「キンケツ」などを探し、少年たちは目を皿にした。駄菓子屋では専用の飼育箱「ホンチ箱」まで売られていたという。