引き取り手を待っている蒸気機関車=福岡県行橋市
福岡県行橋市は、市民会館横に展示している蒸気機関車(SL)「D5110号」について、引き取って展示してくれる団体の募集を始めた。無償だが、移設費用は自己負担となる。市は今年度予算に撤去工事費617万円を計上しており、引き取り手がなければ撤去・解体される見通しだ。
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このSLはデゴイチの愛称で知られ、大型貨物機関車として鹿児島線や筑豊線で37年間活躍した。現役引退後の1974年に旧国鉄から市に無償貸与され、展示してきた。だが老朽化が進んで安全管理も難しくなり、今秋で展示を終了。日本の経済発展を支えた貴重な産業遺産でもあることから展示を前提にした引き取り手を募ることにした。車体はすでにJR九州から譲渡を受けている。
SLの取り扱いを巡っては、有識者による市蒸気機関車活用検討委員会が昨年3月、譲渡希望者の募集を全国に発信するよう提言していた。
市教委文化課によると、SLは燃料の石炭と水を積む炭水車を合わせた長さが20メートル、高さ4メートル、幅3メートル、重さ90トン。引き取り条件として移設は10月末までで、経費はすべて引き取り手の負担となる。移設後はSLの姿のまま公開することが求められており、事業計画書などの提出が必要。
森雅代・文化課長は「問い合わせも何件かあり、有意義に活用してくれる団体が現れることを期待している」と話している。
募集は7月29日まで。募集要項などは市のホームページから入手できる。問い合わせは同課文化財保護係(0930・25・1111、内線1168)。(久恒勇造)