欧州を訪問中の安倍晋三首相は4日午後(日本時間5日未明)、ドイツ・ベルリン郊外の迎賓館メーゼベルク城でメルケル独首相と会談した。安倍首相は世界経済を支えるためとして、主要7カ国(G7)が財政出動で協調するよう理解を求めたが、今月のG7首脳会議(伊勢志摩サミット)で引き続き協議することを確認するにとどまった。
一方、両首相は最近の急激な円高を踏まえ、為替相場の安定が重要だという認識では一致した。
安倍首相は会談で「G7には構造改革の加速化に合わせて機動的な財政出動が求められている。サミットで一段と強い明確なメッセージを発出したい」と、協力を求めた。これに対し、メルケル氏は「財政出動については私は決してフロントランナーではないが、構造改革、金融政策、財政出動を三つ一緒にやっていかなければいけない」と強調。「財政出動だけでなく、民間投資で引っ張ることも重要だ」とも述べ、財政出動に対する明確な賛意は示さなかった。
会談後の共同記者会見で、安倍首相は財政出動について「サミットで引き続き議論を行っていくことで一致した」と語ったが、メルケル氏は「財政の安定と構造改革などを通じて(世界経済を)確固たるものにしていく。日本でもそのことについて話し合いを続けていく」として、財政規律も重視する姿勢も示した。
また為替相場について、安倍首相は会見で「足元の為替市場では急激で投機的な動きが見られている。市場の動向を注意深くよく見て必要に応じて対応したい」と述べ、市場への介入も示唆。メルケル氏も「為替市場の安定は非常に重要だ」と応じ、日本の立場に理解を示した。(ベルリン=小野甲太郎)