欧州連合(EU)の行政を担う欧州委員会は4日、トルコが求めていた6月末までのEU域内への国民のビザなし渡航の実現について、条件付きで認める姿勢を示した。EUには昨年来、中東のシリアなどから120万人を超える難民や移民が殺到した。難民に交じり、不法移民が流入することを恐れる加盟国からは慎重な声も出ている。
EUとトルコは3月、シリアなどからギリシャ入りした難民らを中継地トルコに送還することで合意した。代わりに、EUはトルコ国民への渡航ビザの自由化の早期実現を約束したが、ドイツなどは、就労目的のトルコ人が欧州に殺到する恐れがあると反発していた。
欧州委は4日の発表で、6月末までに、業務や観光目的のトルコ国民の90日間のビザなし渡航を認めるために、トルコが72の必須条件のうち、人権保護など五つの基準を満たす必要があることを明らかにした。トルコのチャブシュオール外相は会見で「我々は今、ビザなし欧州渡航実現にかつてなく近づいた」と語った。ただ、トルコは最近、政権に批判的な報道機関への弾圧を強めており、基準を満たす見通しは立っていない。
また、欧州委は同日、ギリシャなどに到着する難民を加盟国で分担する恒久的な制度について、分担を拒否する国には「財政的な連帯」として、罰金25万ユーロ(約3千万円)を科す提案を発表した。だが、この案についても、難民の受け入れに消極的な中東欧諸国の反発が予想され、実現は厳しい見通しだ。(ブリュッセル=吉田美智子、イスタンブール=春日芳晃)