■360度動画「いきもの目線」
「ナンデヤネン」「カーサン、オカタヲ、タタキマショ―♪」
オウムたちの「おしゃべり動画」はこちら
屋内に入ったとたん、たどたどしい関西弁や歌声が、あちこちから聞こえてきた。ここは、オウムやインコの保護施設「とり村」(埼玉県新座市)。NPO法人「TSUBASA」が運営するこの施設には、飼い主が手放した鳥たちが、全国から集まってくる。
小さな教室ほどある放鳥用の中庭に出ると、オウムの一種オオバタンが、頭上の止まり木から出迎えてくれた。
広げると40~50センチはある淡いピンク色の羽。本気でかめば人の手の骨も砕くという立派なくちばし。激しい鳴き声は威圧感すらあるが、実は人なつこい。小一時間ほどすると、慣れたのか足元にとことこ寄ってきて、頭ですりすりしてくれた。
TSUBASAは16年前、代表理事の松本壮志さん(60)が、半導体関係の会社経営の傍ら設立した。ペットショップで売れ残った鳥たちの扱いに、心を痛めていたためだ。
いまは、約40種150羽のオウムやインコを保護している。繁殖のさせ過ぎや鳴き声の激しさ。飼い主が手放す理由は様々だが、「長寿」であることもその一つだ。
松本さんによると、オウムやインコの寿命は、大型種だと50~60年、100歳を超す例もあるという。「これほど長生きとは知らずに飼い始める人も少なくない」。飼い主自身も年を取って世話をしきれなくなり、保護を頼んでくるのだそうだ。
新たな飼い主探しも、TSUBASAの役割だ。年に20~30羽が引き取られていく。愛情込めて世話した鳥たちの巣立ちは、「最もうれしくて、寂しいときです」。
ところで先ほどのオオバタン、名前は「トキ」君。年齢は30歳を超す。鳴き声がうるさいと売れ残り、ペットショップをたらい回しされていたのを、松本さんが18年前に引き取った。
人が大好きで、「お話」が大好き。激しく鳴くのは「かまって」「ボクを見て」と、人の気を引きたいからなのだ。
「保護した鳥たちみんなが引き取られ、ゼロになるのが目標だ」という松本さん。トキ君の「お話」に気長に付き合ってくれる飼い主も、いつか見つけたい。それが願いだ。(林幹益)