東海岸の前線哨所を守る江原道の薪島防御中隊を視察する金正恩氏。後方の女性は金与正氏。日時は不明。朝鮮中央通信が2015年3月12日に報じた=朝鮮通信
北朝鮮の首都・平壌で10日午前、前日に閉幕した朝鮮労働党の第7回党大会を祝う行事が開かれた。党大会で党最高位にあたる「党委員長」に就いた金正恩(キムジョンウン)氏も姿を見せ、盛んに拍手を受けた。党大会は36年ぶりの開催だったが、正恩氏の権威を強めるための大会として終わった。
党大会では党中央委員129人を選出し、正恩氏の妹で党宣伝扇動副部長とされる金与正(キムヨジョン)氏も含まれた。信頼できる身近な家族を置くことで孤立を避けるねらいもあるとみられる。
与正氏は正恩氏の現地指導にたびたび同行し、近くで見守る姿が報じられていた。10日も祝賀行事で正恩氏が受け取った花束を近くにいた与正氏が預かる場面もあった。
10日付の朝鮮労働党の機関紙「労働新聞」(電子版)の1面には正恩氏がほほえむ巨大な写真とともに、党委員長に推戴(すいたい)する党大会決定書が掲載された。朝鮮中央通信によると、党大会では党規約が改正され、党の最高職を「党委員長」と定めた。
正恩氏は2011年12月、父親の金正日(キムジョンイル)総書記の死去に伴って最高指導者の座に就いた。12年4月には「党第1書記」に就任して党のトップになったが、まだ30代前半と若く、祖父の金日成(キムイルソン)国家主席、金正日氏と比べると実績もない。今回、党最高のポストに就任することで、2人に並ぶ存在として印象づけるねらいがある。
ラヂオプレスによると、労働新聞(電子版)に、日韓メディアで処刑説が報じられていた李永吉(リヨンギル)・前軍総参謀長の顔写真が党政治局員候補の一人として掲載された。野戦司令官出身の李氏をめぐっては、朝鮮労働党による軍の統制強化に不満を持っていたとの見方も出ていた。ラヂオプレスは上将を示す三つ星の階級章を着けており、大将から降格している可能性があるとしている。
韓国の朴槿恵(パククネ)大統領は10日の閣議で、党大会について「南北関係改善に向けた誠意ある変化は見せないまま、核保有国という強引な主張とともに核能力強化を明らかにするなど国際社会の警告を無視して挑発を続けている」と批判した。一方、中国共産党の習近平(シーチンピン)総書記(国家主席)は9日、正恩氏が党委員長に就任したことを受け、祝電を送った。国営新華社通信が同日夜伝えた。(ソウル=東岡徹)