三菱自動車の燃費を巡る偽装と不正
11日で3度目となった三菱自動車の燃費偽装を巡る記者会見は、疑惑の対象が広がり、多くの疑問が残る内容となった。全容解明にはほど遠く、具体的な利用者への補償内容も定まらない。ブランド価値を損なうのは必至で、経営のリスクが膨らんでいる。
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■燃費偽装、車種や責任なお「調査中」
「過去に不祥事があり、徹底的に調べたつもりだった。行きつかなかったという思いだ」
燃費偽装の発覚後、初めて公の場に出た益子修会長兼最高経営責任者(CEO)は語った。過去のリコール隠しなどで傾いた経営を立て直した矢先の不祥事は、これまでの軽4車種(日産自動車向け含む)に加え、自社生産するほぼすべての車種に疑いが出る異常事態になった。
ただ、調査対象は広がったものの、明らかになったのは「疑い」ばかりで、詳しいことは「調査中」という答えが目立った。
軽4車種の燃費偽装では、子会社「三菱自動車エンジニアリング」が偽装したと明らかにしたが、指示した人間の特定など、責任の所在は不明のまま。測定を委託した三菱自の性能実験部については、状況確認を怠った責任は認めつつ、どこまで偽装に関わったかは「調査中」だ。
利用者への補償についても、はっきり言及したのは燃料代の差額のみで、「プラスアルファを検討中」(相川哲郎社長)とするにとどまった。具体的な額も、国土交通省の調査が終わり、偽装の幅が確定してからになるという。
新たに偽装や不正の疑いが出た車種も、燃費試験データを机上計算していた可能性があるSUV「RVR」のほかは「調査中」。現行9車種や販売を終了した車種(記録が残る過去10年分)について、実際の燃費と公表値に開きがないか裏づけ調査をし、「別途報告する」と説明した。
度重なる不祥事に、益子会長は「根は深い。(三菱自という)閉鎖的な社会の中で仕事が行われ、『いままでやってきたことをやれば間違いない』と信じ込んだ面もあるのでは。そういうところに踏み込まないと、再発は防止できない」と述べた。