受託収賄罪などに問われ、一審で無罪を言い渡された岐阜県美濃加茂市長の藤井浩人被告(31)の控訴審が23日、名古屋高裁であった。現金30万円を渡したとされる贈賄業者が証人として出廷し、「20万円を渡したことを私から刑事に話した。1、2日後に10万円渡したことを思い出して話した」と経緯を証言し、捜査段階の供述が自発的なものだったと説明した。次回7月27日に結審する予定。
起訴状によると、藤井市長は市議時代の2013年春、設備会社長だった中林正善受刑者(45)=贈賄罪などで実刑判決が確定=から、浄水プラント設備の導入を職員に働きかけるよう依頼を受け、同年4月2日に10万円、同25日に20万円を受け取ったとされる。
一審・名古屋地裁判決は、中林受刑者が2回目の現金授受を先に自供し、1回目については供述が変遷した点などを疑問視。藤井市長に無罪を言い渡した。
控訴審は一審と同様、中林受刑者の供述の信用性が争点で、この日は主に裁判官が尋問した。中林受刑者は「20万円を話した時に(捜査員に)『他にも渡した記憶はある』と言っていた」と証言した。
また、公判では中林受刑者が4月、藤井市長の一審判決文などを自分の弁護人から受け取り、証人尋問前に読んでいたことも明らかになった。藤井市長の弁護人、郷原信郎弁護士は会見で「高裁は生の記憶を聞きたいと職権で尋問を決めたが、その趣旨に沿わないもので残念だ」と語った。