米ワシントン・ポスト紙の新社屋の編集局。左上の大きな画面には、サイトの訪問者数などがリアルタイムで表示されている=ワシントン、ランハム裕子氏撮影
新興オンラインメディアが存在感を高める米国で、創刊140年近いワシントン・ポストが利用者を伸ばしている。米ネット通販大手「アマゾン・ドット・コム」の創業者、ジェフ・ベゾス氏がオーナーとなって3年近くなり、「ベゾス効果」が浸透してきたことが背景にあるようだ。
ウェブ環境の競争激化、記者の働き方も変えた
「過去を理想化しすぎると組織をまひさせる。この建物を我々の使命と冒険のために捧げたい」。今年1月、ワシントン中心部の新社屋での移転式典。ベゾス氏はそう話し、大きな画面に映し出された「リボン」をカットした。会場にはケリー国務長官のほか、イランで1年半拘束された後釈放された同紙のテヘラン支局長、ジェーソン・レザイアン氏の姿もあった。
米ネット調査会社コムスコアによると、昨年10月、ワシントン・ポストの月間ユニークビジター数(サイトを訪問した実人数)は6690万人となり、ライバルのニューヨーク・タイムズ紙(6580万人)を初めて抜いた。今年4月は6460万人と減ったものの、前年比で3割近く増えた。
ポスト紙が進めるのは、マルチメディアを駆使したコンテンツ作りだ。大統領選の記事をパソコンで開くと、記事の中に写真や動画が埋め込まれている。動画では記者の肉声による説明に加え、各候補が獲得した代議員数がチャートで一目でわかる。
IT企業のような明るく広々とした新社屋は、世界で約700人いる記者に混じって、80人のエンジニアが一緒に作業できるようになっている。戦略担当のジェレミー・ギルバート氏は「どうやればデザインや写真などを最適に融合できるか、記事を作る前に考えられるようにしたかった。彼らの『近さ』がカギとなる」と話す。
■アマゾンをビジネスモデルに
フェイスブックやツイッターといったSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の活用にも力をいれる。9人の専属スタッフが、記事がどう読まれ、どんな記事が話題を呼びそうかを分析。読者が画面をスクロールする速度や、どんなSNSを使って記事を読みに来たのかによって、コンテンツの見せ方を工夫するという。