多くの人がカメラを向ける中、陸上輸送される英国向け高速鉄道車両=下松市、金子淳撮影
「ものづくりのまち」を全国にPRしようと、山口県下松市内で5日の昼間に開かれた英国向け高速鉄道車両の輸送を観覧するイベント。市内の日立製作所笠戸事業所で製造され、鉄道発祥の国へと旅立つ姿を見ようと、県内外から約3万人が詰めかける大盛況だった。イベントを企画した市の予想を超えた見物客が、なぜ集まったのか。
“テツ”の広場
「これほど多くの方々に見に来てもらえるとは予想していなかった。大きな励みになります」
国井益雄市長と並んであいさつに立った日立製作所の正井健太郎・執行役常務は興奮ぎみに語った。
この日午後2時、専用トレーラーに積まれて笠戸事業所を出発した車両は4キロ離れた下松第2ふ頭まで40分かけて移動。沿道はカメラを向ける見物客で埋め尽くされ、身動きもできないほどだった。
これまで交通量の少ない深夜帯に行われていた積み出し港までの陸上輸送。日時を公表していないにもかかわらず熱心な鉄道ファンが訪れることに、「新たな観光資源になる」と目を付けたのは国井市長だった。
小さな地方都市でつくられた車両が、鉄道発祥の国へ「逆輸送」されていく。次代を担う子どもたちに夢を与え、古里に誇りを持ってほしい。県外では「したまつ」と呼ばれることも少なくない無名の街を全国に売り出したい。そんな願いを込めたという。
とはいえ、市が見込んでいた来場者数は1万5千人ほど。観覧エリア周辺に3カ所の臨時駐車場(計770台)を確保しただけだった。
「異変」は朝から起きた。午後…