二回裏日本2死一塁、左越え本塁打を放った小林=川村直子撮影
(10日、WBC1次リーグB組 中国1―7日本)
2017WBC特集
左翼ポール際に向かって伸びていく打球に、打った本人もびっくりした。「なかなか手にしたことがない感触だった」。1点リードの二回2死一塁、9番打者の小林に2ランが飛び出した。沸き上がるベンチにちらりと目をやると、はにかみながらベースを回った。
「僕にはバントしかない」。そんな弱気な発言が出るほど、打撃が苦手だ。昨季の打率2割4厘は、規定打席に達した選手のなかで断然の最下位。前日も、フリー打撃をする選手を横目に、グラウンドの隅でひたすらバントの練習。その数は160球にも上った。
自身の役割を心得ているから、打撃で貢献したいとは思わない。「投手陣をリードすること。守備で頭がいっぱい」。三回の守り。1死一塁で、捕球するとすぐさま一塁へ。自慢の強肩で中国の走者を刺した。一発よりピンチの芽を摘んだことの方がうれしかった。
今回の日本代表は「正捕手不在」と言われ、周囲から弱点と指摘されていた。そんななか、合宿を通して信頼を勝ち取り、WBC開幕から3試合すべてで先発マスク。豪州戦では、救援の岡田がストライクが入らなくなると、マウンドへ。直後の球で打ち取り、小久保監督から「絶妙な間」と絶賛された。
A5サイズのノートには、投手陣と相手打者の特徴がぎっしりと記される。「扇の要」と言われるのが捕手。丸刈り頭の27歳が、急成長を遂げている。(山口裕起)