地震で被害を受けた神社。日本活断層学会が保存を要望している、地表に表れた断層はブルーシートで覆われていた=5月20日、熊本県益城町杉堂、石倉徹也撮影
熊本地震で地面に表れた断層の保存を求める動きが、研究者の間で出ている。地震や災害の貴重な「証拠」として研究に役立つうえ、地震の脅威を後世に伝えられるとの理由からだ。地震への不安を抱く被災者や、復旧に追われる地元自治体の心情的な理解や協力が欠かせず、調整が始まっている。
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「地表に表れた断層は、地震の性質、災害との関連を知るための証拠として科学的に貴重で、防災を考える上でも貴重」。日本活断層学会は5月下旬、熊本県益城(ましき)町に、地表に表れたずれた断層の保存を要望した。同月9日付で県にも同町と南阿蘇村の断層計3カ所の保存を要望していた。要望では「被害に遭われた方々の心中を察すればこの時期に要望することに躊躇(ちゅうちょ)も覚える」としつつ、早期の対応を望んでいる。
県に要望書を出した時点の会長だった岡田篤正・京都大名誉教授は「人の手が入ったり、雨風にさらされたりすると断層は消えてしまう。保存の意義を受け止めてもらえれば」と語る。
益城町教育委員会は県教委の担当者や研究者らと、保存要望があった断層を確認した。町教委の担当者は「保存する方向で検討している」とした上で、「理解を得るために、研究者に断層の価値について土地の所有者に説明してもらう必要がある」と話す。所有者との協議は今後本格化させるという。県教委の担当者は「地元自治体や所有者の要望があれば、協力していきたい」という。
発生直後から熊本県内で断層を調査した中田高(たかし)・広島大名誉教授は、断層が表れた土地の所有者らに直接、保存への理解と協力を求めた。「行政側の迅速な対応が必要だ」と訴える。